虹の里から

地域の人たちと、「まちづくり」について意見を述べ合う、交流ブログです!

みかん農業をとりまく情況について

 わたしが青年団で学んだことの一つに、総会資料などを作る際や、何か活動計画を立てる際には、「青年を取巻く社会の状況分析」をかならず行う、ということがありました。先輩たちはだから、しっかりと世の中をみていました。いま、それを思い出して、俵津の主産業のみかん農業がおかれている社会情況というものを、考えてみようと思います。秋風が立ち始めたみかん畑で、話し合えたらいいなと思います。思いつくままに、挙げていきます。

 

 わたしは、考えるポイントは、わたしたちのことではなく、みかんを買っていただく消費者の「フトコロ具合」が、これからどうなるか、だと思います。

 これはかなり厳しいことになるのではないか、と思います。二年ほど前から「東京オリンピックが終わったら景気が悪くなる」ということはよく言われておりましたが、突然の「コロナ禍」で、とてもそんなものじゃない大不況がやってきました。

 GDP国内総生産)が、アメリカ・中国についで世界第三位というのは変わりませんが、一人当たりGDPはどんどん下がりつづけ、22位とか(韓国は10位)。働く人の賃金も上がりません。EU諸国と比べても半分か三分の二くらい。最低賃金も日本は平均800円、EUは、1200~1600円。「貧乏人の互助会」(橋本治)といわれるEUさえそうなんです。非正規労働者も、働く人の4割もいて、しかもその大半が年収200万以下。さらに、これからますますみんな貧しくなっていくような気がしてなりません。

 主食でないみかんに対する購買意欲は、国民から減退していくとみなければなりません。

 みかんを食べるには、心の余裕がいります。生活にシトラスを取り入れることを素敵だと思う美学が要ります。暖かい家族のだんらんがいります。日本人がそれらを失わないことを、ただ祈るばかりです。

 少子高齢化社会では、みかんの消費量は落ちていくと考えなければなりません。年寄りは、みかんに対する思い入れがあるし、お金も持っているから(これからは貧困老人が増えるといわれておりますが)ある程度買おうとするでしょうが、胃袋は小さくなっているので量はのびない。子供の食欲は旺盛でも、現代は食べるものがいっぱいあるから、みかんへは食指がむかない・みかん離れが指摘されてもいる。7人に一人が、貧困家庭の子というメディア報道も最近ありました。

 むかしは日本人一人20kg以上みかんを食べていた時代がありましたが、おそらく今は5キロを切っているでしょう。

 「コロナ」で今後の貿易がどうなるかわかりませんが、TPP・日欧ETA・日米FTA等々は、日本農業にとってはやはり懸念材料であることは間違いないと思います。いま、とくに畜産農家が大変なことになっているのは報道の通りだとおもいます。

 生産資材・生活資材が値上がりしているのも、農家経営の圧迫材料です。消費税10%もひびいています。

 いま政府は「コロナ対策」で、やたら補助金をばらまいておりますが、それもいつまでもは続かないでしょう。これからは国の予算も、社会保障費・インフラ補修費・国債費・軍事費・災害対策費・コロナ対策費等々の費目が激増するのは目に見えております。農家への補助は次第にカットされていくものと思われます。

 国民の「年金」の支給繰り下げ・減額も実施されつづけるでしょう。

 労働力不足がいわれておりますが、外国から大量の「安い労働力」が入ってくるようになると、これも国民の賃金を押し下げる要因になるでしょう。「グローバリズム」というのはもともとそういうことだったのでしょう。今はむしろ「コロナ禍」で大量の失業者が出る心配のほうが大きいですが(企業倒産も)。

 「AI(人工知能)の時代」というのは、どんな事態をもたらすのでしょうか。多くの人が職を奪われるようになるといわれておりますが、そのとき農業はどうなるのでしょうか。

 地球温暖化がすすみ、自然災害の多発する時代になっています。二年前の西日本豪雨のようなことはこれから頻繁におこるでしょう。南海トラフや首都直下地震が起こったら、もうみかん農業どころではないのでは、と考えさせられます。

 温暖化は、みかん農業をやりにくくします。病害虫の多発・品種の不適地化など。農家の対応力がためされます。

 要らぬ心配でしょうが(それでも考えられることはすべて頭に置いておくことは必要です)、もし伊方原発にF1のような事故が起こったら、ということも考えておかねば、と思います。季節風に乗って直接放射能がやってくればアウトですが、「風評被害」も大変怖い。

 また、核のゴミ・放射性廃棄物の処分場も、どこも引き受けるところがないので、最後は、原発立地市町村がやらざるを得なくなるでしょう。これも、心配です。

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 「農政」の方向も大変気になります。俵津ホームページの「コラム」で考えてみたことがありましたが、わたしの目には国は農業の振興にあまり乗り気であるようにはとても思えません。

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 中国や北朝鮮、韓国・ロシアとの対立・敵視のようなことも、大変気になる事です。(たとえば、韓国には趙漢珪・チョウハンギュさんという自然農業の大家がおりますが、それが原因でそういう方たちと交流できなくなるのは、大きな損失です。また、戦争のような事態になれば、平和であってこそできる農業の存立が危うくなります。さらに、インバウンド観光に影響するような外交政策を敢えて取る必要もないと思うのですが。)

 

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 最も気になるのは、やはりアメリカとの関係でしょう。衰退段階に入ったアメリカ、世界のことを考えなくなったアメリカ、自国第一主義になったアメリカ。これは大変な脅威です。

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 心配なのは、国民に元気がない(様に見える)ことです。国も国民も現状に満足して、変えていくという意欲が感じられないことです。それは、国政選挙に半分の人が行かない・棄権しているということに表れていると思います。

 この10月にあると言われている衆議院選挙に、この人たちが押し掛けるようになったら、この国は劇的に変わる、と思うのですが・・・。余計なお世話ですが、今度の選挙だけは、行った方が、いいと思います。

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 こうやって書いてきて、気が滅入ってしまいましたので、やめますが、みかん農家にとって「希望」のようなものはないのでしょうか。

 「コロナ禍」で世界中の国々が、半ば国境を閉ざし始めましたので、一部の人たちが「自給」を叫び始めましたのは、いいことかもしれません。マスクの自給などというのはお笑い種かもしれませんが、車の部品とか、食料とかの自給まで言及するようになってきました。農業を大切にしなければならない、という声も。わたしは、あまり期待していませんが。喉元過ぎれば熱さを忘れる、というのはこの国のあたりまえ、ですから。

 わたしたちのすべきこと・できることは何でしょうか。農業の大切さがわかる人、農家の力になろう、という人たちと連携することです。俵津農業の向かって行く方向はそこにあるのだと、わたしは思います。そして、うまい蜜柑への飽くなき追及!

 みかんも作っている佐賀の農民作家・山下惣一さんが言っておりますが、危機の時最も深刻な打撃を受けるのは、大規模農家の方で、むしろ小農こそ強い。国を救うのは小農だ、とか。心強いこの言葉を胸に抱いて、俵津みかん農家、頑張っていきまっしょい!!

                       (2020・9・13)