虹の里から

地域の人たちと、「まちづくり」について意見を述べ合う、交流ブログです!

ウクライナが、心配だ

 ロシアの侵略によって始まったロシアーウクライナ戦争が2年になる。ウクライナにとって芳しくない戦況が報じられるようになっている。ウクライナが負ければこの世から正義が滅びる。人類の数少ない希望の一つが失われる。

 以下は、現状を理解するために、わたしが読んだ新聞や雑誌からの引用です。どれが誰の「言」かは煩瑣なので(まことに失礼ではありますが)いちいちことわりませんのでよろしくご理解ください。これはわたし自身が納得するためのものです。よかったらおつきあいください。

朝日新聞

・同紙の佐藤優氏へのインタビュー記事

・「世界」1月号の松里公孝氏の論考

・同3月号の伊東孝之氏の論考

 

■戦況はどうなっているのか

ウクライナ軍は17日ロシアの進撃を食い止める要衝だった東部ドネツク州アウジーイウカから撤退すると表明した。ウクライナ軍は今後防戦一方の戦い方を余儀なくされるだろう。

・二〇二三年六月五日から開始されたウクライナ軍の反転攻勢は失敗した。反転攻勢の目標は、ロシア内地とクリミアを陸上で繋ぐ回廊を切断すること、言い換えればウクライナ軍がアゾフ海に到達することだった。ウクライナ軍はロシア軍を押し返すことができなかった。ウクライナ軍はこの反転攻勢によって不可逆喪失(死者と重症者の合計)を九万人出している。

BBCの報道によれば、ニ〇二三年前半で手足切断したウクライナ傷痍兵の数は一万五〇〇〇人に達している。医学の水準がまったく違ったにもかかわらず、第二次世界大戦全期間に手足切断したイギリス軍人の総数は一万二〇〇〇人であった。ウクライナがいかに無謀な人海戦術を展開しているかということである。

・「早くやめないと、ウクライナ黒海に面した領域が全部ロシアにとられる可能性がある。米国の軍事支援が先細り、ウクライナは完全に弾切れを起こしています。」

・露ウ戦争は膨大な人命の犠牲を生んでいる。アルジャジーラ紙はロシア軍の戦死者を約五万人と推定している。ウクライナ側の喪失(戦死者、重症者の合計)は、おそらく二〇万人を超える。特にウクライナ側は、すでに民族の再生産が妨げられるほどの犠牲である。

■ロシアはどうか

・生活雑感を述べると、スーパーマーケットは商品で溢れかえっており、西側の制裁効果は全くない。物価はほぼ日本並み。ロシア人の平均月収は九〇〇ドル強で共稼ぎが原則なので、生活は楽ではないが、困窮というレベルではない。

・制裁で外国人観光客が来なくなったことは大打撃のはずだが、その分、国内観光客が増えたので困らなかったという。カフェやレストランは深夜まで賑わっており、COVID-19中の日本のようなことはない。

・ロシア政府は、銃後の市民生活に悪影響を及ぼさない程度に戦闘規模を調整している。テレビを見ていても、報道番組を覗けば普通の探偵もの、歌謡、スポーツなどばかりで、これが戦争中の国のテレビとはとても思えない。

・ロシア政府は、二〇二二年秋のハルキウ州、へルソン州からの敗退の際、戦線を立て直すために約三〇万人を徴兵した。その後は徴兵は行わず、二〇二三年に入ってから一一月初旬までに志願・契約のみで四一万人の兵士を確保したと誇っている。ロシア政府は国民、若者の愛国心の高揚に一定成功しているとみなすべきだろう。

・二〇二二年二月の開戦後、「こんなことなら、(ユーロマイダン革命直後、ウクライナの軍事力がまだ弱かった)二〇一四年にやっちゃえばよかったのに」という意見がロシアのマスコミや政治家の間で広がった。対話の余地は全くない。

プリゴジンの反乱のような右派・好戦派からのプーチン政権批判があったが、先日の反体制派の指導者ナワリヌイ氏の獄死(おそらく殺害されたのだろうと言われている)などから推察すれば、ロシア国内にも戦争反対、プーチン批判勢力もかなりの数がいると思われる。

停戦の道はないのか

・「今秋の米大統領選でトランプ前大統領が当選するような事態になれば、完全にはしごを外された形になる。ロシアは手加減しないでしょう。だから早く停戦に持っていかないと」

・「変化が起きるとしたらウクライナの中からでしょう。ゼレンスキー政権である限り無理です。彼は4州だけでなくクリミアまでの解放を勝敗ラインにした。それを達成できないと敗北を認めたことになります。」

・「4州併合によってロシアの目標があいまいになってしまった。(中略)プーチン大統領は勝敗ラインを明確にしなくなった。実効支配の領域が開戦時より少しでも多ければ、当初目的は達成できたという形でいつでも停戦できるということです。率直に言ってこれは予測していませんでした。」

ウクライナは軍事費どころか年金や公務員給与も西側からの援助で賄っている状況なので、案外唐突に停戦が実現する可能性もあると私は思う。

・高齢者にまともな年金も払えない貧しいウクライナ国家に、(戦争で負傷した)これらの青年のまだ何十年もある人生の面倒が見られるのか。二〇万人の子どもが父親を失ったとすれば、誰が彼らを大学まで出すのか。ロシアに勝ってロシアの賠償金で出すのか。「ウクライナは正義のために戦え」などと言っている人たちが、カンパして出すのか。ウクライナに問題が起きた時だけウクライナに関心を向けるのはやめてもらいたい。ウクライナの本当の苦しみは、この戦争が終わった時に始まるのである。

・停戦交渉に正議論を持ち込むと歴史の議論になり、きりがなくなるので、持ち込むべきではないのである。(中略)新たな戦争を防ぐためにも、露ウ戦争は止めなければならないのである。

■それでも、戦争は続く

・ロシアはその後も四州以外のハリキウ州に軍を送っている。ウクライナ各地を爆撃し、民間人を殺し続けている。併合を認めなければ、痛い目に遭うぞ、併合地を取り戻そうとすれば核兵器を使うぞという脅かしである。

・いずれにせよロシアが何を求めているかは明らかだ。それはロシア人・ロシア語話者に正義を回復するということではない。ウクライナの非軍事化でもない。非ナチ化はもちろんない。ある時点までは中立化を求めていたが、それも自身の行動によって断念せざるを得なくなった。残るのは、プーチンが当初口にすることさえ憚ったあからさまな領土要求である。それを具体的に明示したのが、えせ住民投票に基づく四州の併合だった。

・国連は機能不全に陥っているが、今日の世界平和の基礎はやはり国連憲章にある。国連憲章は加盟国の主権平等の原則に基礎をおき、武力による威嚇または行使を禁じている。ロシアはこの国連憲章の基本原則を踏みにじったが、これを看過すれば、将来の戦争の種を蒔くことになろう。

・かつてフランスの哲学者サルトルは、ベトナム戦争に際して、核兵器を「歴史にノーを突きつける兵器」と特徴づけた。そこにこの兵器の特殊性がある。その前に立ち竦むならば、歴史は止まる。ベトナム人の知恵に学んで、立ち竦むのではなく、いかにして核保有国の裏をかいて、抵抗を続けるかを考えるべきだ。

 ここからは、わたしの思いだが、一日も早い停戦を祈る気持ちはつのるが、どうやったらそれが実現するのかを思う時、天を仰いでしまう。

 欧米のウクライナへの支援疲れが言われるようになっている。アメリカ議会は援助資金を出すことを渋っている。ウクライナ国民の戦争疲れも顕著になっている。若者の徴兵拒否の動きも出るようになっていると聞く。ウクライナとその国民のためにもならない戦争の段階が来ているような気がしてならない。

 かと言って欧米(NATO)が参戦してウクライナと共に戦えば、それこそ第三次世界大戦になってしまう。論理的に言えば(それだけで言えば)そうすべきだというのが正しいのであろうが。

 ウクライナの納得できる停戦案など果たしてあるのか。ロシアの一方的決定に身を任せるしかないのか。

 わたしにはわからない。

                        (2024・2・22)