虹の里から

地域の人たちと、「まちづくり」について意見を述べ合う、交流ブログです!

憲法9条こそ、最大の「抑止力」。

 今回は、「NO WAR」(2022・3・15)、「日本て戦争できるの?やって勝てるの?」(2022・7・5)や、昨年7月の参院選前後に書いた「ああ参院選」シリーズ(!)のつづきです。

 

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ぶっそうな時代になってきました。

タモリが、昨年12月の「徹子の部屋」で、黒柳徹子に「来年はどんな年になりますか?」と訊かれて、「“新しい戦前”になるね」と答えたとか。

エマニュエル・トッド(フランスの歴史人口学者・家族人類学者)は、『第三次世界大戦はもう始まっている』(大野舞・訳、文春新書、2022・6)と言っています。(後述します。)

・成田悠輔イェール大学経済学助教授は、「少子高齢化対策は、高齢者の集団自決しかない」と言っているとか。

田原総一朗は、「朝まで生テレビ」で、「今のこの国には希望が持てない、むしろ絶望している」と言った若者に対して、「それなら日本から出ていけ」と激怒して言ったとか。

ロシアーウクライナ戦争を見て何思う?

 今もなおウクライナの大地で続けられている「ロシアーウクライナ戦争」を見て、ふつう、わたしたちは何を思うでしょうか?

 やっぱり、「これは、いけない」というか「NO  WAR」、ですよね。両国ですでに、正確な数はわかりませんが数万人から20万人規模の死者が出ているといわれています。ウクライナの国土はもうメチャメチャに破壊されている。政府の重要施設だけではなく民間の住宅やインフラ、それに農地までが無残な姿をさらけ出している。それらを見て、世界の民衆は心を痛めています。一刻も早くこの戦争を終わらせる道はないのかと思っております。

 ところが、そう思わない人たちもおります。

 自公政権の人たちです。彼らはこの戦争を利用して国民に危機をあおり、あろうことか安全保障関連3文書に、敵基地攻撃能力(反撃能力≒先制攻撃能力)の保有を明記し、2023年度から5年間の防衛費を43兆円(実際は60兆円)に増やすことを盛り込み、戦後日本の専守防衛の安全保障政策を根本から変える大転換を閣議決定して、戦争への道をまっしぐらに進み始めました。

 驚くのは、これに(日本が反撃能力を持つのは)「やむを得ないのではないか」と思っている国民が多くいるということです。

日本人は「戦争のリアル」を想像出来なくなったのでしょうか?

●わたしは逆に感じたのです。そっちの方向に進めば、日本が(ウクライナの人には申し訳ない言い方ですが)「ウクライナ化」する。つまり、戦場化する。わたしたちが日々テレビ映像で見ているあのウクライナのようになる、ということです。そのような未来しか選択肢が残っていなくなる。

●77年前の日本全土にわたった米軍による大空襲や、広島・長崎に投下された原子爆弾のことを、みんな、忘れたのでしょうか。

自衛隊員や「敵対国」の兵士、両国のわたしたち民間人がおびただしく死ぬ、ということに思いはいかないのでしょうか。

靖国神社の祭神を新たにつくってはならない、という決意はないのでしょうか。

●こちらが先制攻撃したら、何倍にもミサイルが打ち返されてくる。それが原発にでも命中すればそれでもうこの国は終わりだという想像力はないのでしょうか。

●先制攻撃ともなれば、世界中からの非難の大合唱。あの時のように世界から孤立し、国連脱退というような事態に及ぶことは考えてみないのでしょうか。

●先制攻撃の「今だ、打て」という判断(命令)は、アメリカがします!戦争の指揮権もアメリカにあります。「独立国」として、それでいいのでしょうか?

●あの戦争で犠牲にした「沖縄」への想いは、ないのでしょうか。

●仮に「台湾有事」で中国との戦争になれば、輸入大国の日本は直ちに国が維持できなくなります。食料や石油をはじめあらゆる物資が入ってこなくなります。どうするのでしょう?

●鈴木宣弘東大農学部教授がこんな「メッセージ」を出しています。

アメリカの大学が核戦争が起きた場合の計算をした。被爆者は2700万人、物流停止による餓死者は世界で2億5500万人でその3割は日本に集中する。日本人の6割に当たる7200万人が餓死する。食料なしで武器だけあっても勝てるわけがない。食料こそ国防の要。」

●中国へ進出している日本企業(12000社ほど)は、戦争になればどうなるのでしょう?

●「軍拡」には、果てしがありません。しかも、こちらがやれば相手もやります。「反撃能力」が“戦争抑止”になるというのは、夢物語です。

●「戦争」のために予算を使えば、国民の生活は破壊されます。社会保障、福祉、教育、医療、少子化対策などの予算ははどんどん削られていきます。

●「異次元の少子化対策」という岸田首相の言葉に、わたしは戦前の「産めよ、増やせよ」を思い出しました。(「LGBTQには生産性がない」という杉田水脈議員の言葉にも)。

●今回の防衛費増額43兆円、その9割はアメリカの兵器を買うために使われるそうです。安倍さんが買ったF35戦闘機もそうですが、今回500発も買う約束をした巡航ミサイル・トマホークなどもアメリカ兵器メーカーの不良在庫、使い物にならない代物だそうです。しかもそれを日本政府は、値切るとかの交渉など一切なし、アメリカの言い値で(通常の2~3倍の価格で)買い取るというのですから驚きです。

●「増税」が間違いなく待っています。(また、先の戦争では、戦時国債を国民に買わせるために村々の青年団が使われたと聞きます。)

●首都直下地震南海トラフ地震が発生すれば、その復興費用は合わせて2000兆円にもなるという推計があります。戦争自体がとてつもない(人間がもたらす)大災害なのにこの上どうするというのでしょうか?

●戦争要員、自衛隊員だけで足りなくなるのは目に見えています。いま辞めていく隊員が多いそうです。「徴兵制」が視野に入ってきます。

●「非国民」だとか「売国奴」だとかなんだとか、国民を分断する言葉が飛び交うような社会になるのはイヤです。

●「基本的人権」の存在、果たして、あるでしょうか?

●「まちづくり」など、もはや、出来なくなってしまいます。

※ 「戦争のリアル」を最も克明に表現しているのは、友人・若尾健一君の二冊の遺著、『宗教の戦争協力と天皇制』『虐殺と日本民族』だと思います。(市販されていないのが残念ですが)。

ウクライナ化」とは?

 政治学者の白井聡さんがその著『日本解体論』(東京新聞記者の望月衣塑子さんとの共著、朝日新書、2022・8)でこんなことを言っています。

「戦争が長引くにつれて、ロシア対ウクライナであると同時に、ロシア対NATOの色合いが濃くなってきました。代理戦争の性格ですね。この戦争によって、アメリカがいわば『ウクライナ・モデル』を発見して、それを極東にあてはめるというシナリオが最も恐るべきものです。つまり、もっぱら自国の利益になるように、自らは兵を出さず、同盟国に敵対国と戦わせるという戦術です。中台問題をめぐって、台湾と日本にウクライナの役回りをさせようということになります。いまの政治状況だと、日本がこのシナリオに巻き込まれていく可能性は極めて高いと私は見ます。日本の世論に現れた安全保障の危機感のようなものは、そのための地ならしとして機能するでしょう。」

 白井さんはこの発言の前段でこんなことも言っています。

「先ほど、ロシアではプーチン体制に対する支持率は高齢者で高く、若者では低いと紹介しました。その意味ではまだ未来があると言えます。一方、日本はどうでしょうか。若年層になればなるほど、核シェアリングだ、防衛費2%だとか言い出す自民党を支持しています。日本の未来はロシア以下かもしれませんね。」

 

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いまこそ憲法9条、です!

 わたしは昨年の参院選前後に書いた一連の記事で、この選挙で自公が圧勝すれば、「黄金の三年間」で憲法改悪が強行されて、日本は戦争へ前のめりになるだろうとの懸念を綴りました。選挙後の臨時国会が終わった後に、まさかこのような形で事態が大転回するとは思っていませんでした。自民党政府はもはや「国会」など(そこでの時間をかけた「熟議」など)しなくていいと決したようです。恐ろしいことが起こり始めました。まさに77年以前への「回帰」です。タモリが言った「新しい戦前」への回帰です。

 軍事国家化に未来はありません。あるとしたら、また再びの「敗戦」です。しかも今度はあれ以上のひどい敗戦になるでしょう。

 日本国憲法(特に9条)こそが、「未来」でなくてはなりません。「希望」でなくてはなりません。憲法9条こそが、最大の戦争抑止力です。

 考えてもみましょう。明治維新からの77年(1868~1945)は、戦争ばかりの77年でした。ところが、日本国憲法下の戦後の77年(1945~2022)は、一度も戦争がありませんでした。この厳然たる事実こそがそのことの証明になっています。78年目に、憲法を破壊すれば、もう一度「戦前」が始まるのは、冷静に考えてみれば誰にでもわかることです。

 77年前、この憲法(9条)を見た世界の人びとは(特にアジアの人びとは)、仰天して、そして大きな安心をしたことだろうと想像します。天皇ファシズムの狂気の国から、戦争を放棄して永遠の平和国家になると宣言したのですから。

 戦後の東西冷戦下の「逆コース」でアメリカから自身が作った憲法改憲を迫られつづけ、自民党政権もそれを望み続けてきた日本でしたが、それが今、不安定化する世界で最も輝きを増しているのです。もう一度、そこへ、原点へ戻りませんか。

 

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世界の賢者の声に耳傾けてみれば・・・

 せっかくですから、エマニュエル・トッド氏の本について触れておきます。

 氏はウクライナ戦争について、「本来、この戦争は簡単に避けられた」と言います。「この戦争は、『ウクライナの中立化』という当初からのロシアの要請を西側が受け入れていれば、容易に避けることができた戦争でした。」「自国の国境保全に関してロシアを安心させていれば、何事も起こらなかったはずです。」

 「NATOは東方に拡大しない」ことを西側はロシアに対して約束し、冷戦後のロシアも「西側との共存」を目指したにもかかわらず、結局西側(とくにアメリカ・イギリス)はウクライナに武器を与え、武装化させ、“事実上”ウクライナNATOに組み入れていました。それはロシアにとって到底許すことのできない、生存にかかわる『死活問題』だったのです。

 「そもそも、ロシアがウクライナ以外の領土への侵攻を考えているとは、私には思えません。すでにその人口規模から見て広大すぎる領土を抱え、その保全だけで手一杯だからです。」

 ウクライナのゼレンスキー大統領も“軽率”だったといえそうです。ロシアのたびたびの警告も聞かず、「NATOに加盟したい」と言っていたからです。(今はさらにヨーロッパをこの戦争に引き込む意図を持っているようです。)それらのことがロシアの侵攻を招いたということでしょう。

 そして、もはや「ロシア―ウクライナ戦争は、「ロシア対NATO」「ロシア対アメリカ」の戦争に拡大している。(第一次世界大戦のような構図の)第三次世界大戦になっている、とトッド氏は言うのです。

 

 「アメリカは“支援”することで、ウクライナを“破壊”している」。また、アメリカはこの戦争を長期化することで、ロシアが疲弊し、アメリカに対抗する大国としてのロシアの没落を狙っている、とも。

 そして最後に、こういうのです。「戦争が終わった時、生き残ったウクライナ人たちは、どう感じるのでしょうか。少なくとも私がウクライナ人なら、アメリカに対して激しい憎悪を抱くはずです。というのも『アメリカは血まみれの玩具のようにウクライナを利用した』ということこそ、すでに明らかな歴史的真実だからです。」

日本の生きる道は・・・

 トッド氏は、日本についても言及しております。

 「極論すれば、NATO日米安保は、ドイツや日本という『同盟国』を守るためのものではありません。アメリカの支配力を維持し、とくにドイツと日本という重要な『保護領』を維持するためなのです。アメリカが『反ロシア』という立場に立つ動機の大部分も、ドイツと日本をロシアから遠ざけてアメリカ側に引き留めることにあるのです。」

 トッド氏は、日本がアメリカから自律するために「日本も核を持て」とまで言っておりますが、これはどうにもいただけません。

ほんとうに、おそろしいのは・・・

 考えてみれば、今回のロシアのウクライナ侵攻を、アメリカは事前に察知しながら止めようとしませんでした。今も停戦に向けて、戦争終結に向けて、前向きの努力はしていないように思います。

 アメリカは過去にも、ベトナムアフガニスタンイラク、シリアなどで今のロシアを糾弾できないようなことをやって来たのですよね。 

 本当に怖いのは、恐ろしいのは、アメリカなのではないでしょうか。

 手玉に取られている日本の政治家たちの愚かさに、ボーゼンとします。特に今回の閣議決定を手土産にして、バイデン大統領との会談に臨んだ岸田首相には愕然とします。満面の笑みで迎えたバイデン大統領、そりゃあ嬉しいでしょうね。こんなに簡単に思い通りになるとは、と。誰かがツイートしていました。「日本はアメリカのATMか」と。

 わたしたちは、西側のメディア、それに従う日本のメディアの報道により、「ロシアは悪」「ウクライナは善」みたいな意識をなんとなく持っていますが、世界はそう単純ではないようです。

 先の白井さんもこう言っています。「日本にいると、ついロシアは人類の敵になったみたいにおもいがちだけれども、経済制裁を課しているのはヨーロッパ諸国と北米、アジアでは日本、韓国、台湾、シンガポールだけ、ほかはオセアニアのオーストラリアとニュージーランドのみ。中南米やアフリカなど、皆無です。要は、制裁しているのはいわゆる先進国だけじゃないですか。対ロ制裁に加わっていない国のほうが圧倒的に多いわけです。」。対談相手の望月さんもこう返します。「ロシアの『非友好国リスト』で言っても48カ国で、友好国のほうが多いとも言えます。日本にしてもそうですが天然ガス原油をロシアに依存している国も多いし、日本と違ってアメリカのやり方に反発している国も多い。当たり前ですが、国際社会は一枚岩ではありません。」

 「世界」を、冷静に見る見方を養いたいものです。

                     (2023・1・22)