虹の里から

地域の人たちと、「まちづくり」について意見を述べ合う、交流ブログです!

NO WAR

 ロシアが、ウクライナ侵略戦争を始めました。もう三週間になります。この暴挙に強く抗議します。ロシアは直ちに戦闘を止め、軍隊を引き揚げよ。

 わたしは、21世紀は人類が「戦争」を廃棄する世紀だと思っています。二度と再び「ヒトラー」と「スターリン」を出産してはいけないと覚悟する世紀だと思っています。が、その道は絶望的に遠いことを痛感させられます。

 この侵略戦争、ロシアは当初2~3日でウクライナを制圧するつもりでいたようですが、ウクライナ国民の必死の抵抗が続けられています。

 早速、西田孝志くんが、ブログ「私の映画案内」で、その膨大な映画アーカイブの中から『赤い闇 スターリンの冷たい大地』を取り上げて、ウクライナの人々の抵抗の根底にあるものを開示してくれています。「20世紀にウクライナが味わった悲しみと悲劇を考えると、ロシアの要求を受け入れて、自己防衛の権利を手放すことなどありえないと思う」と。ぜひ、右の「リンク」から入って読んでいただきたいと思います。

 なお、西田くんには、この戦争を機にメディアで話題にされているウクライナ映画『winter on fire ウクライナ・自由への闘い』『チェルノブイリ』『アトランティス』『リフレクション』なども、できたらとりあげて欲しいと思います。わたしは全く見る機会がないのでぜひともお願いしたい。黒澤明スピルバーグの『夢』も何かを示唆しているとか聞きましたが。

 何とかこの戦争をやめさせる手立てのようなもの=希望はないのでしょうか。

● 渦中にあるウクライナの人々が発信するSNSの情報によって、世界中の人々が、残虐非道な戦争の実態を瞬時に把握できていることに、わたしは希望を見出します。世界中に「反戦」の大きなうねりが生じています。これはかつてなかったことです。インターネットという文明の利器が、戦争を止めることに資することになるかもしれません。

● ロシアの民衆の中から、「NO WAR」の動きが現れていることにも一縷の望みを抱きます。これが、さらなる大きなうねりとなり、ロシア国家を、プーチンを、ロシア軍兵士を動かすことになることを祈ります。

 ロシアの年寄りたちの中には、「もう決してソ連時代にはもどりたくない」という人達が多いとも聞きます。それは世界の民衆にとってもそうでしょう。ソルジェニーツィン(1918-2008)が白日の下にさらしたスターリンによる『収容所群島』(全六巻、木村浩訳、新潮文庫)に戻りたいと思うものなど、この世にはいないはずです。

● 「アメリカ」そしてバイデンの存在感が低下しています。フランスのマクロンも、トルコやイスラエルの大統領もプーチンを説得することはできませんでした。今、プーチンに影響を与えることができるのは、中国の習近平だけだといわれています。だとしたら、習近平には一日でも早くロシアへ赴き、プーチンを説得してほしいものです。

 事態は急を要します。ザポリージャ原発や南ウクライナ原発への攻撃が懸念され、化学兵器サリンマスタード・ガスなど)、核までもの使用が懸念されています。第三次世界大戦も危惧されています。

 もう一人、おりました。わが日本の安倍(晋三)氏です。プーチンと27回も会っていて、「ウラジーミル」「シンゾ―」と呼び合っている仲とか。プーチンに対して、「ウラジーミル、君と僕は同じ未来(ゴール)を見ている!そのゴールに向かって、駆けて駆けて駆けぬこうではないか!」と(かつての会談で)よびかけたという名うての強者です。安倍氏も、直ちにモスクワへ飛ぶべきでしょう。

 ノルウェー・ノーベル委員会の皆さんも、「ノーベル平和賞」を、この二人に、直ちに用意して下さい。

● わたしたちも、インターネット(SNS)で、「声」をあげたいものです。No WarでもStop warでもPutin Go Homeでも何でもいい。世界の片隅に生きていても、声を世界に届けることができるようになったということは、本当に素晴らしいことです。

 わたしは、ロシアの文豪トルストイの『イワンのばか』がとても好きです(かの宮沢賢治もこの作品を愛していたということです)。そこには、「ロシア」の生きるべき道が説かれているように思います。『トルストイ民話集 イワンのばか 他八篇』(中村白葉訳、岩波文庫)から、いくつかあげてみます。

● 『イワンのばかとそのふたりの兄弟 (軍人のセミョーンと、ほてい腹のタラースと、唖の妹マラーニャと、老悪魔と、三人の小悪魔についての話』には、最後にこんなくだりがあります。

「イワンは、今でもまだ生きていて、多くの人々はその国へ押しかけてくる。ふたりの兄たちも彼のところへ来て、彼に養ってもらっている。だれかが来て、「どうかわたくしどもを養って下さい」と言えば、彼は「ああよしよし!」と言う。「いくらでもいなさるがいい―わしのところにはなんでもどっさりあるんだから」ただ、この国にはひとつの習慣がある―手にたこのできている人は、食卓につく資格があるが、手にたこのないものは、人の残りものを食わなければならない。」

 そうなんです!ロシアは、「イワンの王国」をつくればいいのです!

 プーチンは「足るを知ればいい」のです。「去る者は追わず、来る者は拒まず」の精神でことを運べばいいのです。他国の領土に手を出すことなど考えなくていいのです。

● 『人にはどれほどの土地がいるか』では、人は自分の遺骸を埋めることができる六尺(三アルシン)の土地があればいい、と言っています。あれほどの広大で豊かな国土がありながら、他国の土地をせせることなどどうして必要なのでしょうか。

 トルストイは、「人間の欲望が、いかに限りのないものであるか。そして、それが人間にとってどんなに恐るべきものであるか」を知り尽くしたうえで、この思想を民話にしたのです。

● 『作男エメリヤンとから太鼓』、これがまたいいのです。終りの方にこうあります。

「エメリヤンは、太鼓を持ったまま宮殿を出て、それをたたいた。彼がそれをたたくと、王さまの軍隊が全部、エメリヤンのそばへ集まって来た。そしてエメリヤンに敬礼して、彼の与える命令を待っている。王さまは窓から自分の軍隊に向かって、エメリヤンについて行ってはならんぞと叫びはじめた。が、兵隊たちは王さまのいうことをきかないで、みんなエメリヤンのあとについて歩いて行く。」

「エメリヤンは、太鼓をたたきながら河のそばへ来た。兵隊たちもそのあとについて来た。エメリヤンは河のそばで太鼓をたたきこわし、こなごなに砕くと、それを河へ投げ込んだ。と、兵隊はのこらず逃げ散ってしまった。エメリヤンは、女房をつれてわが家へ帰った。その時いらい、王さまも、彼を苦しめることをやめられた。で、彼は万事幸福に、都合よく、安穏な生活を送るようになった。」

 「から太鼓」は何の比喩でしょう。解説者は「権力の虚しさ」といいます。エメリヤンが打ち壊したものは確かにそうでしょう。でも打ち鳴らした太鼓の方は、現代ではSNS上で世界の民衆が叩くもの、虚しいかもしれないが、上げざるを得ない「NO  WAR」の声、だと言ってはいけないでしょうか。ロシアの人々よ、兵士たちよ、そしてプーチンよ!その高らかに鳴るから太鼓の音を聞け!そして、ウクライナから去れ!

 かつてトルストイとその文学は、日本人の憧れでした。現代によみがえってほしい人物です。

◆ 

 わたしたちの青春時代は、ロシア民謡を聞いたり歌ったりするのが、一種のブームでした。いい歌がたくさんあります。「ヴォルガの舟歌」「ともしび」「黒い瞳」「コロブチカ」「カチューシャ」「ステンカラージン」「ポーリュシカ・ポーレ」「トロイカ」「赤いサラファン」・・・。懐かしいですね。また、素直な気持ちで、聞いたり歌ったりできる時代にもどしてほしいものです。

 もう一つ、わたしが「ロシア、いいな」と思えるものに、「ダーチャ」(家庭菜園つき別荘)があります。わたしが願う「国民皆農」にもっとも近づいているのはロシアではないかとさえ思うほどです。ロシア国家統計局のデータによれば、国内3400万世帯の8割がそこで食料の大半を自給しているというのです。ジャガイモなどはロシアの生産量の9割以上をダーチャで賄っているということです。賢い指導者さえいれば、ロシアはしあわせな「イワンの国」になれるのです。国民1億5000万人が力を合わせてそういう国をつくってほしいものです。それは十分世界の「希望」になります。

                       (2022・3・15)