虹の里から

地域の人たちと、「まちづくり」について意見を述べ合う、交流ブログです!

空き家と廃園は、「コモン」に

 「俵津を“永遠”にするために」を、つづけましょう。

 

 とてもいいことが、昨年から今年にかけて、ありました。

 わが家がミカンをつくらせていただいている農地を、二人の地主さんから、いただいたのです。こんな嬉しいこと、ありがたいこと、素晴らしいことが、あるでしょうか!わが家の一同は、驚きと感激に浸っております。

 そして、わたしは、思ったのです。深く考えさせられたのです。瀕死の「俵津」を救う解決策の重大なヒントをいただいたのです。

 そうか、このお二人の地主さんのような温かいご行為を、みんながしていただければ、俵津は蘇るかもしれない、と。(お二人には失礼な論述になるかもしれませんがお許しください。)

 現在、「空き家問題」や「廃園(荒廃園)対策」は、「まちづくり」の阻害要因として、わたしたちを悩ませ続けておりますが、これを、所有者の方が、無償で提供していただけたら、と思うのです。僭越でおこがましいことだとは、重々分かっておりますが、虫のよすぎる話だということもよくわかっておりますが、これらを俵津民の「コモン」(共有地≒社会的共通資本)にしていただくのです。「好きにしていいよ」と言っていただくのです。

 (固定資産税・贈与税・登記料などの問題、維持管理費などの問題は今回は捨象させてください。)

 もう使い物にならない廃屋は、市の補助制度などを利用して積極的に解体していただき、そのかかった費用に少し上乗せしたくらいの価格で、更地となった土地を、希望者に売っていただく。まだ使える空き家は、所有権は保持したままで、無償か低価格で譲っていただく。とりあえずは、そんな感じでもいいと思います。

 このシステムを、認めてくださった方の家には(たとえば俵津スマイルがつくった)「マーク立札」をたて、住民が一目でわかるようにし、利用促進を図るようにしてはどうでしょう。

 ミカン山の廃園(耕作放棄地)は、もうこれは、無償にしていただきたいですね。土地所有権は放棄しないでも構いませんが。これも、公民館へ行けば、誰のどの園が利用可能か(趣旨に賛同して提供してもらっているか)が一目でわかるようにしていただいたらいいですね。そしてこれは非農家(西予市民・愛媛県民・全国民も対象に)にも開放していただきたいものです。

 「人に貸したら、もう取られたもんと一緒や。ほやけん、わしゃ人には絶対貸さん」という方はおります。勿論わたしはその人の気持ち、わかります。でも、そこを越えなければ、この俵津は立ちいかない時代がもうとっくに来ております。勝負の分かれ目は、ここだと思います。 

 内田樹さんが『コモンの再生』(文藝春秋、2020)の中で、「逆ホームステッド法」を作ったらどうかと言っています。

 

 今、地方では「コモンの再生」が始まっているように思えます。高齢化、過疎化している土地ではもう土地や建物を私有財産としては維持しにくくなっているからです。無住の家なのだけれど私有財産なので手を出すことができない。そういう廃屋が建ち並んでいる。人が住まない家というのは、防犯上も防災上も公衆衛生上も非常に問題なのですけれど、所有者がわからない、連絡がつかないということになると自治体も勝手には処分できない。

 そこで僕からの提案なんですけれど、「地方創生」を本気でやるつもりなら、いっそ「逆ホームステッド法」を作ったらどうかと思います。一定期間誰からも所有権の申し立てがない無住の土地家屋は公有とする。そして、今度はそこに住んで5年間生業を営んだ人に無償に近い値段で払い下げる。

 土地って、本来私有すべきものじゃないと僕は思います。誰かが一定期間管理責任を負うのはいいけれど、土地は絶対に私物ではない。

 

 「ホームステッド法」(アメリカ)については、こんな説明をされています。

 

 西部開拓に必要な移民労働力を集めるために、国有地に5年間定住して耕作すれば、64ヘクタールを無償で手に入れることができるというのがホームステッド法です。この法律は1840年代から部分的に施行されました。この法律に惹かれてヨーロッパから大量の移民が流れ込みました。本国では小作人でも、アメリカでは、一つ土地で5年間働けば自営農になれるんですから。そして、この施策が成功して、ヨーロッパから何百万という移民が新大陸に流れ込み、その労働力によって西部開拓が一気に進みました。

 「逆ホームステッド法」、賛成です!

 そのくらいやらなければ、もう地方消滅は救えない。わたしの案は、5年間なんてもう待っていられないから直ちに、しかも法律によってではなく、土地建物の所有者(地主・地権者)の善意で、というものですが・・・。これが俵津でやれれば、俵津は一挙にこの分野での“先進地”になれます。

 余談ですが、昔、WOWOW だったかNHKBSだったかで見たアメリカ映画を思い出しました。タイトルも監督の名前も俳優の名前もまったくわかりませんが、1シーンだけおぼえている映画です。あの映画は、ひょっとして「ホームステッド法」時代のアメリカを描いたものかもしれないと今にして思いました。

 ボストンマラソンのスタート前の風景を思い出させるシーンがあって、そこに何千何万、ひょっとしたら何十万のヨーロッパからの移住希望者と思しき人々が芋の子を洗うようにしています。どの州かはわかりませんが、自分の好きな土地を州政府がやるというのです。人々の顔はどの顔もどの顔も輝いています。号砲一発、人々はあらかじめ見当をつけていた自分の土地になるであろう場所目指して猛ダッシュします。主人公のヒーロー&ヒロインの二人も手に手を取って懸命に駆けます、駆けます、駆けます・・・。

 (西田孝志くん、なんという映画かわかりませんか?教えてください。)

 

 「天晴農園」の夢が叶ったようです。ゲストハウスを建てるために設けたクラウドファンディング、目標額をクリアしたようです。わたしまで嬉しくなりました。大勢の「ゲスト」が俵津を訪れてくれるようになるといいですね。一民間のグループがこのような企画・構想力を持ち、実現力を有していることに、あらためて驚きます。感激します。

 空き家や廃園がわたしの言うようになれば、こうしたウエーブはさらに拡大していくことでしょう。有り余る土地や建物を持つ農協などは、率先してその利用権を、こうした若者たちに与えていただきたいものです。農協の活路はそうした方向にしかないとわたしは思っています。

 最近、近所の廃屋になって久しい家が解体されました。いつ瓦が落ちてくるか、いつ倒壊して道路がふさがれるか、と心配されていた家でした。むかし、近所の子供たちがよく集まって遊んだ思い出深い家でもありました。この十年くらいは狸の住処になっていました。

 200坪はあろうかという(家屋敷としては)広大な更地が現れました。一抹の寂しさはありますが、俵津の新たな“希望”のようなものをも感じさせる光景です。

                     (2022・2・19)