虹の里から

地域の人たちと、「まちづくり」について意見を述べ合う、交流ブログです!

「西予・世界農業高校」を夢見る!

 西予市の広報誌・『広報せいよ』の10月号に、「特集 私が行きたい場所」というページがあって、西予市内にある「高校」が問題として取り上げられています。

 「西予市の誕生から17年。合併時から人口減少が続いています。14歳以下の若年層の人口も合併当初は5648人だったのが令和3年7月時点で3538人と2000人以上の減少。子どもの減少や交通機関などの発達による市外高校への進学者増加に伴い、市内3校への入学者数は定員に届かない状況が続いています。この状況が続くと統廃合になる可能性もあります。」

 人口減少・少子高齢化はこの国の既定の事実だし、東京一極集中政策の続く限り、地方に人口が還流してくることもないので、間違いなくそうなるでしょう。

 「国土交通省が離島を対象に行った調査では、高校がある場合とない場合で人口増減率におよそ10%の差が出るという結果に。このことから、高校の有無が人口減少に関連していることが分かります。地域から高校がなくなると、より良い教育環境を求めて人口の流出が加速。人口減少が進むと地域のコミュニティ機能維持も困難になってしまいます。」

 たいへんです。

 わたしは、行きつけの整体院が宇和の田の筋にあるので、その折宇和高校の下を通っていくのですが、桜ケ丘にある高校とさらにその上にある歴博愛媛県立歴史文化博物館)の辺りにただよう雰囲気がとても好きです。この二つ、いつまでもあり続けてほしいとおもいます。

 内田樹さんが、こんなことを言っています。

「いずれ大学がひとつもない「無大学県」が出現する可能性さえある。これは地元にとっては文化的にも経済的にも大きな痛手になります。というのは、高等教育機関がもたらすのは単に地域の経済効果だけではなく、いわば一種の「空気」でもあるからです。風通しのよい知性、権威や世俗におもねらない自尊心、活発な好奇心、そういうものが流れ出る場所が存在する街と、そういうものがない街の違いは、暮らしていればはっきりわかります。」(『ローカリズム宣言』deco、2018)

 文章の「大学」を「高校」に置き換えて読むのはちょっと無理があるかもしれませんが、無高校の町もやはりその魅力を大きく喪失するでしょうね。

 ところで広報誌の主題は、「地域に高校を残すために動き出した人たちの思い」と活動報告なのですが、ここではこれ以上ふれません。わたしの「夢物語」を語ります。おつきあい下さい。ただし、エビデンス(根拠)のある話ではありませんので、どうか関係者の皆様、ご容赦のほどお願い申し上げます。

 わたしは、野村高校と三瓶高校のことは知りませんので、宇和高校を想定した話にします。ここは地域の80代以上の人たちにとっては、「大地と共に心を耕せ!」の教訓を持つ「農蚕校」として強い思いが残っているところです。基本はだから「農業高校」にあります。そこに起死回生策のポイントを絞ったらどうでしょうか。

 これから時代は、あるいは世界は、「食料」・「農業」を最重要テーマの一つとして動いていくでしょう。いま世界には、8億人余の飢餓人口(健康的な食事ができない人の数は30億人)がいます(現在の地球の人口は78億人)。「コロナ禍」で、各国の「自給」意識が高まっています。「地球温暖化」が事態を悪化させる懸念材料もあります。日本だけが、食料などはカネでいくらでも買えるから日本に農業はいらない、などといまだに言っています。

 妄想コンドルのはぐれ一羽=わたしの夢はこんなです。

❶ 学校の名前は、「西予・世界農業高校」です。(もっといい名前があったら教えてください。)

❷ 生徒を日本全国から募集する。あるいはアジアを中心にして世界中から募集する。

 西予市には海抜数メートルの明浜・三瓶から海抜1400メートルの大野ヶ原までの間に、すべての農業があります。また日本の農業技術は世界に冠たるものがあります。江戸時代に書かれた膨大な「農書」の世界もあります。世界の農のメッカにできる条件は十分にあります。

❸ 全寮制としましょうか。廃校になる(悲しいことですが)小中学校を改造してはどうでしょうか。あるいは、学校周辺の空き家を住空間として使ってもらう手もあります。もちろん宇和以外の町に住んでもらって、そこから通ってもらっても何らかまいません。

❹ あらゆる農業分野の学科を用意しましょう。

❺ 環境分野の学科も取り入れるようにしたらどうでしょうか。エアコンなしで暮らせる木材を使ったエコ住宅未来建築科なんていうのも面白いとおもうのですが。

❻ どうせなら、第一次産業の全てを学べる学校にしましょうか。林業科や水産科のある高校と提携すれば可能でしょう。愛媛の持てる力をすべて利用しましょう。

❼ もちろん有機農業科」もつくりましょう!

❽ 愛媛大学と緊密な連携をしましょう。愛媛全体を世界の農業の学び舎にするのです。やがては、四国の島全体を世界の農業と農学の最先進地にしましょう。四国は「志国」(坂村真民先生の「詩国」から発想を借りたわたしの造語です。もっとも、後で高知県が最近使い始めたのを知りましたが)です。

❾ 生徒たちの親兄弟・親戚一族、友人たち、全国の各自治体の政治家や公務員たち、まちづくりに関心のある活動家たち、各国の同様の人たちなどなどが大勢西予市を訪れるようになるでしょう。そこから、移住者も増えるようになるかもしれません。

❿ 3Kの代表だった農業が、時代の最先端のカッコイイ職業のナンバー1になることだってできるでしょう。ムードは変えられるのです。

⓫ 「無茶々園」も積極的に関わっていただきたい。何ができるか、みんなで考えていただきたい。つきあいのある消費者のみなさんにも協力をお願いしていただきたい。面白い世界がこの西予の天地に展開していくことになるでしょう!

⓬ 全国の心ある活動家・学者・ジャーナリスト・芸術家・政治家などの方たちのご協力も得ましょう。ことあるごとにご講演にも来ていただきましょう。そんな時には、わたしたち市民も参加できるようにしていただきたい。出張授業も大いにやっていただきましょう。明浜の片山元治さんなども協力していただけるのではないでしょうか(彼は世界の農業・情勢を知っています。世界の未来を見通す目も持っています。)。

⓭ 世界の高校生による「世界農業研究大会」を、西予市で開催しましょう!

 最後にもう一度、内田樹さんに登場していただきます。こんなことを書かれています。ぜひお読みください。

 「先日、愛農高校(愛農学園農業高等学校)という三重県にあるキリスト教の農業高校に招かれて行ってきました。その少し前には、東京の自由学園に伺いました。どちらもとてもユニークで、自由で、そして自分たちの建学の理念に忠実な教育を行っている教育機関でした。時代の風儀にもマジョリティの価値観にもかかわりなく、確固とした、おのれの哲学に従って教育を行っている。そういう印象を受けました。(中略)

 愛農高校は自給自足を実践しています。自分たちで野菜を作り、米を作り、牛や豚や鶏を育て、果樹を育て、その収穫物を食べる。チェーンソーで木を切り出して、製材して、自分たちの手で校舎や作業所を建てる。生きる上で必要なものはできるだけ自分の手で自然から取り出すという生き方をめざしている。

 生きるために必要なものはすべて市場で貨幣によって購入することができるとみんなが信じている社会の中にあって、こういう「野蛮な」構えはむしろ健全だと僕は思います。「農業とは何か」、「食文化とは何か」という根源的な問いに直面せざるをえないからです。(中略)

 僕が自給自足をめざす教育機関に好感を覚えるのは、何よりもそこがものごとを根源的に考える機会を提供しようとしているように思えるからです。どんな偏差値の高い学校よりも、僕はものごとを根源的に考えることを教育の目的に掲げる教育機関を評価します。

 愛農高校は食物が自給自足であるだけでなく、ソーラーパネルで発電し、井戸を掘って飲料にしている。仮に大きな自然災害が起きて、ライフラインが途絶しても、ここだけは生き延びることができる。ですから、災害時には地域住民の「アジール(避難所)」として機能することができる。何かあっても、「愛農学園に行けばなんとかなる」。実際にそういう場所として設計されていると伺いました。他が崩れても、ここは持ちこたえられるように、「危機耐性」に配慮して作られている。僕はこのような構えを高く評価します。」(『日本習合論』、ミシマ社、2020)

 

 いかがでしょうか。これは全国から、また世界から、生徒を呼び込む「理念」をつくる上で、大きな参考になるのではないでしょうか。南海トラフ地震も近づいています。みんなで、一度考えてみたいと思う次第です。

                      (2021・10・6)