虹の里から

地域の人たちと、「まちづくり」について意見を述べ合う、交流ブログです!

村上さん!やはり、「下野」しかないのではありませんか?!

 村上誠一郎さんのことが、気になっておりました。

 言わずと知れた愛媛2区選出の自民党衆議院議員で、党の重鎮です。ではあるのですが、わたしは村上さんのことをあまり知りません。でも、時々テレビのニュース番組でチラッと出ては、骨のある・信念のある発言をされるので「おっ、この人は!」と思っておりました。

 先日、村上さんのことを知りたいと思い、著作でも出されていないかと宇和の明屋書店へ行ってみました。自民党 失敗の本質』(石破茂村上誠一郎内田樹御厨貴前川喜平・古賀茂明・望月衣塑子・小沢一郎の8氏の共著、宝島社新書、2021年10月刊、990円)というのがありました。インタビュー集です。村上さんは、「第四章 自由闊達な議論がなくなれば民主主義は容易にファシズム化する」に登場します(99~122ページ)。

 8氏の中で一番最初に読みました。感動、感動、また感動でした。スゴイ人です。さすが村上海賊の18代目です。(村上海賊と言へば、和田竜さんの『村上海賊の娘新潮文庫、が面白かったですね。)

 編集部のリード部分を上げます。

安倍一強が続き、執行部に物言えない空気がただよう自民党内において、異論を唱え続けた数少ない自民党議員の一人が村上誠一郎氏である。閣議決定による集団的自衛権の行使容認からの安全保障関連法、特定秘密保護法共謀罪などの強行採決に反対し、学術会議の任命拒否における菅政権の対応などに対し、歯に衣着せぬ批判をしてきた。愛媛2区にて連続当選11回という実績が村上氏の政治家としての信念を後押しするが、問題はその信念を受け継ぐべき若手が果たして今の自民党内で育つかどうかだ。(取材日:2021年8月20日

 (村上さんの発言録は、後半部分にまとめて記しますが)、「その信念を受け継ぐべき若手」は、今のままでは、わたしは育たないと思います。村上さんのような方は、誠に残念ですが、村上さんで終わりでしょう。傍証にもならないかもしれませんが、同じ愛媛県の1区の塩崎恭久氏の後継選びにそれを感じました。ご自分の子息を後継者にすることは、自民党県連ともども決定済みなのに、「公募制」をとるなどとみえみえ・バレバレの茶番劇を演じました。わたしは、塩崎氏は「あべ一族」の中では最も優秀な人だと思っていましたが、最後になってみそをつけてしまいました。親子は別な人格であるのはもちろんであるとしても、子息ものうのうとその流れの中に安住している限り、そう思わざるを得ません。(ついでに言いますが、国会議員の「世襲」はいけません。時代を封建時代に戻さないでください。)

 村上誠一郎さんが描かれる「自民党」にするためには、わたしは、どうしても二期8年の自民党の下野」が必要だと思います。一期4年では残滓が消滅しきれませんから、やはり8年、耐えていただかねばなりません。8年あれば、みんな正気を取り戻せるのではないでしょうか。村上さん!それで、よろしいでしょうか。8年後に、蘇った自民党を見せてください!

 以下、村上さんの発言を記します。これはわたしの覚書のためのものです。興味のある方は、お付き合いください。

村上誠一郎発言録〉

①率直に言って、安倍・菅政権は、自民党の素晴らしいところを全部壊してしまったといえます。今や党幹部に意見する人間、官邸の意に反した発言をした人間は人事で登用されません。そのために党内から自由な議論が消えてしまった。

②理由は明白で、すべて官邸主導になってしまったからです。内閣人事局が人事権を行使して官僚からの意見を封じ込めました。一方、政治家に対しては選挙の公認とポストの人事権で党執行部に対する党内の批判も抑え込みました。

③(自民党から議論が消えてしまったのは)やはり小選挙区制になったことが大きいと思います。党の公認と比例名簿の順位、これらすべてを党の執行部に握られてしまった。名簿の順位も能力などの客観的な基準があればいいのですが、非常に恣意的で、執行部に対する忠誠心で決まってしまう傾向があります。

④党幹部の独裁が強まるにつれて派閥も弱体化しました。これにより、新人の育成や政策の立案といった、それぞれの政治家が足腰を鍛えるチャンスが失われた。さらに公的助成金、党の資金、そして官房機密費といった資金もすべて、党幹部と総理総裁に一極集中しました。選挙とポストと資金を握られたら、政治家はもはや喉元を抑えられたも同然です。言いたいことを言えなくなってしまいます。

⑤そもそも正しくないことを間違っていると言わなかったら、国会議員になっている意味がないのではないですか。ポストのために、間違っていると思いながら忖度したら、政治家として責任を果たしていないことになります。

⑥今は100年前と世界の状況が似てきているので、私は大変危機感を持っています。100年前に何が起きたか。スペイン風邪の世界的大流行ですね。当時、18億人程度の世界人口のおよそ半数近くが感染し、5000万人以上の方がなくなったといわれています。当時は人口が急激に減少することで経済も縮小し、1929年に大恐慌が起こりました。こういった危機に直面すると、国民は政府に全面的に頼ろうとして全権を委任し、結果としてファシズムが台頭します。

⑦私はあの時(2014年、安倍政権が閣議決定集団的自衛権の行使を容認した時)、集団的自衛権に強く反対しました。なぜならば、もしも台湾を巡って米中の緊張が極端に高まり、米中戦争が勃発したら、台湾には米軍基地がありませんから、日本の沖縄か岩国から米軍が出撃することになるでしょう。そうなれば、自動的に集団的自衛権に巻き込まれてしまう可能性があります。集団的自衛権の行使容認を主張していた議員たちはこの危険性を認識していたのでしょうか。

⑧安倍さんの人事には4つのパターンしかありません。まず1つ目がNAIS(根本匠安倍晋三石原伸晃塩崎恭久)の会のお友達メンバー。2つ目のパターンが高市早苗氏、稲田朋美氏、有村治子氏のようなライトウィング。3番目が小渕優子氏や小泉純一郎氏、麻生太郎氏、鈴木俊一氏といった、元総理の一族。そして4番目が、萩生田光一氏や西村康稔氏といったイエスマンの側近たち。この4つのパターンで人事を回しているだけ。同じ考えのお友達かイエスマンだけで構成された党に、ダイナミックな政策やビジョンのある政治は望めません。

⑨もともとの自民党には「振り子の原理」が働いていました。自民党の一番のライトウィングがずっと続いたことで党自体が右傾化し、復元力がなくなってしまいました。これが、自民党の政策が片寄ってしまった大きな原因となりました。今まで、中道右派だった宏池会竹下派等が、自民党の中心でなくなってしまいました。私のような中道左派極左扱いになってしまいます。

⑩このままでは政治家を目指すよい人材が永田町に来なくなるのではないか、という危機感があります。

⑪(憲法改正は)あれは安倍さんの好みの世界です。現憲法アメリカの押し付け憲法だと言う人もいますが、日本人だけで最初からあのような憲法をつくることができたでしょうか。平和主義、主権在民基本的人権の尊重がきちんと練り込まれた憲法を制定できたことは、戦後日本にとって、非常に重要な意味を持つと思います。ただ、天皇制を残すことと引き換えに米国を尊重することが外交の基本となってしまった。それが今も大きな問題として残っています。

⑫一方で、財政、金融、社会保障制度の枠組みをいかに持続可能なものにしていくかという内政における喫緊の課題は、安倍政権下では完全になおざりにされてしまいました。

⑬対米外交といっても、ほとんど内容もないので矛盾が生じようもなかったのではないでしょうか。米国は、対日赤字をどう減らすかということが最優先課題なわけですから。そこで日本は、相手の要求のままにイージスアショア、F35などの武器を買わされ、次は農産物を買わされつつあります。

⑭今、世界は二酸化炭素削減を謳って電気自動車を積極的に推進していますね。ですが、この本当の目的は日本の自動車産業の競争力を弱めることです。ガソリン自動車は必要な部品も多く、高度なテクノロジーが求められました。ところが、電気自動車というのは部品も少なくて、どこの国でも生産できてしまう手軽さがある。その意味で、日本の自動車産業の優位性が骨抜きにされようとしているのです。このように安倍さんが戦略なき外交を展開している間に、日本の国益はどんどん失われてきたのではないでしょうか。

⑮(コロナ禍でも)危機管理能力のなさが露呈しましたね。ダイヤモンド・プリンセス号の船内での感染拡大ばかりに気を取られて、2020年の春節の時に中国からの観光客を大勢入国させました。経済効果(爆買い)を優先させたため、初動で大失敗したといえます。さらなる大失敗は、菅氏と二階氏が主導したGo Toキャンペーンによって感染爆発を招いたこと。これも経済を優先させた結果です。PCR検査も徹底できず、ワクチン接種率もOECD加盟国中最下位という状態がしばらく続きましたが、オリンピックをなんとしてでも開催して人気を挽回したいという大前提があり、その政治的思惑に合わせて政策を行ってきたため、危機管理が十分にできませんでした。1年以上たった今も、重症者用のベッドの確保が十分できずに次々と自宅で亡くなられています。

⑯官僚の知識や経験や能力をうまく使うのが本来の政治主導ですが、菅氏は官房長官時代から人事で官僚を抑え込もうとしてきました。官邸の意のままに官僚を動かそうとするだけの官邸主導は、もはや失敗しか生みません。人事で抑え込んでしまうと、官僚は正論も本音も言えなくなってしまうわけですから。

⑰なぜ菅氏が安倍政権を継承することになったのか?安倍氏は今までの森友・加計・桜を見る会等の責任を追及されたくなかった。いずれにせよ、こういった隠蔽体質ゆえに、これらの問題が一向に解決せず、国会でそのほかの重要な議論までもが前に進まないというのは非常に不幸な事態です。後ろめたいところがある人には、きちんとしかるべき責任を取ってもらって早く決着させて、課題山積の政治を前に進めていかなければいけません。

⑱成長戦略はいまだに何も出てきていません。アベノミクスは、官製相場によって円安株高にしただけで、結果として日本全体の産業の競争力を弱体化させてしまいました。何よりも、社会保障と財政と金融が独立して機能していたのが、どれかが破綻したら、すべてが破綻するという状況になりつつあります。今や、名目GDPに対する国と地方を合わせた借金の残高はGDPの250%になっています。戦後ハイパーインフレを起こした第二次世界大戦中と同じような状態に近づいています。このままの状態にしておけば、日本の財政は完全に行きづまります。持続可能な社会保障制度というものを設計しなおさなければ、次世代は生き残れません。しかし、いまだに党内ではアベノミクスの継承などと無責任なことを言う総裁選立候補者がいます。

⑲(ー小選挙区制で握られている以上は、党内に自由闊達な議論は取り戻せない?)しかし、公認だのポストだのが握られているからといっても、官邸の方針を批判したところで、今の時代、命の危険はないでしょう?今は陸軍が存在するわけでもないのに、なぜ政治家は、党の執行部や官邸に対してこれほどまでに委縮してしまうのか。政治家として、正しいと思うところがあったら少数でも正論を言わなくてはならない。それが三木・河本派の伝統なのです。その信念・闘争心がなくなったら、政治家は辞めなくてはなりません。今、政治家が矜持を持って正義と道義のある正しい政治を次の世代に手渡せるかどうか、まさに正念場だと思っています。

                 (2021・10・25)