虹の里から

地域の人たちと、「まちづくり」について意見を述べ合う、交流ブログです!

自民党の選挙戦略に思う。(シン・二ホンへ!➃)

 さて、私たちはおそらく、いま、先を急ぐのではなく、ここに踏みとどまって、三つの種類の寂しさを、がっきと受け止め、受け入れなければならないのだと私は思っています。

 一つは、日本は、もはや工業立国ではないということ。

 もう一つは、もはや、この国は、成長はせず、長い後退戦を戦っていかなければならないのだということ。

 そして最後の一つは、日本という国は、もはやアジア唯一の先進国ではないということ。

    ―(平田オリザ『下り坂をそろそろと下る』講談社現代新書

 

 ある女性週刊誌が、「全国の女性5000人が選んだ 次の選挙で落選して欲しい政治家」というアンケート記事を載せていました。それによると、

麻生太郎二階俊博菅義偉安倍晋三丸山穂高辻元清美小泉進次郎西村康稔枝野幸男河野太郎

の順番でした。ナットク!順番は違いますが、わたしも大体同じ意見です。

 また、ある雑誌には、「ポスト菅 次期首相候補 一千人アンケート」というのが載っていました。

枝野幸男安倍晋三小池百合子志位和夫野田聖子山本太郎・・・という具合に並んでいます。ちなみに、あの人気があるとみられていた小泉進次郎はなんと⑫位。

 こちらには、わたしの希望する人はいません。日本の政界は恐ろしい程の人材不足です。かつてならわたしは、国連難民高等弁務官緒方貞子さん(1927~2019)のような方がいいなと思っていました。田中真紀子さんも首相の器でした。

 このまま自民党政権が変わらないのなら、望めるマシな人は、石破茂さん・村上誠一郎さん・・くらいでしょうか。立民の枝野さんは、ウーン・・。彼が、「連合」ときっぱりと手を切り、選挙に行かない50パーセントの有権者と向き合うことをはっきりと示すなら、枝野さんでもいいかとは思いますが・・。ドイツのメルケルさん、ニュージーランドのアーダーンさん、台湾の蔡英文さん・・のような方がどうして日本には出ないのでしょうか。

 そうだ、立民はいっそ、アメリカのサンダースさんや間もなく辞められるメルケルさんに党首になってもらったら、どうでしょうか?!!

 白井聡さんの『主権者のいない国』(講談社、2021)という本を読んでいたら、自民党の選挙戦略に触れているところがありました(第二章 現代の構造ー新自由主義反知性主義 五 反知性主義-その世界的文脈と日本的特殊性)。適菜収『日本をダメにしたB層の研究』(講談社、2012)を素材にした言及です。

 二〇〇五年の小泉郵政解散の総選挙をめぐって、自民党から選挙戦略の構築を依頼された広告会社(スリード社)は、国民の階層をA~D層に分類し、B層に狙いを定めよと提言し、同党はそれを採用したということです。

〈A層〉

構造改革に肯定的でかつIQ(知能指数)が高い

ネオリベ化、グローバル化の促進によって恩恵を受けている少数の「勝ち組」的エリート層

B層

構造改革に肯定的でかつIQが低い層

・具体的なことはよくわからないが小泉純一郎のキャラクターを支持する層

・マスコミ報道に流されやすい比較的IQが低い人たち。つまり、マスコミ報道が、グローバル化規制緩和―すなわち、ネオリベラリズム政策の推進―が良いものだと喧伝すれば、それを鵜吞みにしてよく分りもしないのに「賛成!」と叫ぶ迂闊で知性を欠いた人々である。

〈C層〉

ネオリベ化、グローバル化の促進によるデメリットに対して敏感であり、それらを一層推し進めることに対して知的に裏づけられた反対の意見を持っている。ゆえに、この集団は「構造改革抵抗守旧派」として規定されている。

〈D層〉

・既に(失業等の痛みにより)構造改革に恐怖を覚えている層

・この層は打ちひしがれて政治や社会への興味を失い、選挙などには参加しそうにない(つまり、選挙マーケティングの対象としては無意味な)層であるとみなしうるかもしれない。

●《白井さんのコメント》

「右のような分類の仕方を目にするとき、不快感を催す人も少なくないであろう。しかし、おそらくこの分類には何がしかの真実が含まれているに違いない。なぜなら、現にこの分類を活用することによって、小泉自民党は選挙で大成功を収めたからである。彼らは、有権者の最大のボリュームゾーンB層であると見抜き、その事実に即したメディア戦略を立て(具体的にはテレビのワイドショーの重視)、実行した。つまり、この分類には、総中流社会が崩壊した後の新しい階級社会の有り様が、それなりの精確さを持って映し出されているのである。」

 誤解のないように言っておかなければなりませんが、白井さんはこの章で、現代の日本を、そして世界を覆う憂うべき反知性主義について論じているのであって、人間性の一部にある劣情に媚びるような興味本位のことを述べているのではありません。

 そして、これが現在の安倍=菅政権にまで受け継がれている自民党の選挙戦略なのです。選挙年齢を18歳に引き下げたのも、それが何ら自民党政権を害するものではないことを確信できたからでしょう。彼らもB層の範疇に入るものである、と。

 民主主義の世の中になったからと言っても、政治は権力闘争です。合法であれば、手段を選ばないのが権力でしょう。

 それは認めるとしても、わたしは、悲しいのです。現在の日本の情況が、冒頭に掲げた平田オリザさんのいうものであれば(わたしはそうだと思います)、今、わたしたちが(政権が)やらなければいけないことは、1億2700万人の国民すべての知性・能力を最大にすることです。そうでなければ、やがて、この国は滅びます。そのことをしっかり認識した政党に・首相に、政治をやっていただきたい。任せたい。

イエスマンばかりで構成する政権はいらない。

・学術会議の任命拒否をするような政権はいらない。

・大学の人文系学部はいらない、すぐに利益を生み出す理系学問だけあればいいというような政権はいらない。

・人間の能力を制限する教育統制(教科書検定のような)をするような政権はいらない。

・記録を残さず、文書改竄を命令したりする政権はいらない。官僚に屈辱感や悲哀やの感情を呼び起こすようなことばかりをさせる(ブルシット・ジョブをさせる)政権はいらない。

とまあ、こんなこと書き出したら止まらない、そんな政権は本当に要らないと、今、真剣に思います。

 

 あと二か月余りで、「総選挙」は行われます。この選挙をきっかけに「この国のかたち」が変わることを切に祈ります。

                       (2021・8・20)