虹の里から

地域の人たちと、「まちづくり」について意見を述べ合う、交流ブログです!

お、金持ちが変った?

 小春日和のある日、わたしはみかん山で美しい宇和海の景色を眺めながら、弁当(もちろん愛妻弁当です!)を食べていました。食べ終わってふと、弁当を包んでいた古新聞の記事が目に留まりました(朝日新聞、2020年6月5日)。「新型コロナ 富豪が憂える資本主義 〈インタビュー〉」とあります。金持ちが何を憂えるんだろう?金持ちは何を考えているんだろう?

 金持ちといえば、わたしはマイクロソフトビル・ゲイツフェイスブックマーク・ザッカーバーグくらいしか知りません。何昔になるかわかりませんが、かつてならアメリカの鉄鋼王のなんとか・カーネギーか日本の電器王・松下幸之助、知ってるのはそのくらい。

 ここでとりあげられているのは、「起業家・ベンチャーキャピタリスト、ニック・ハノーアーさん」(知らないなあ)。どのくらいの金持ちなんだろう?

 ―コロナ危機は世界的な株価急落を招きました。富裕層のあなたもさすがにこたえたのでは。(と言う記者の質問に)。「いいえ。私も、金持ちの仲間たちも全く問題ありません。数百億円以上の資産をいったん築いてしまえば、株価が急落しようが、不動産バブルがはじけようが、心配ない。最も裕福な人たちは今も富を増やしています。私は飛行機も持っていますし、使えるお金に限りがないのは楽しいものです」だと。言うじゃありませんか。その富は、アマゾンの最初の出資者になって巨利を得てから今日まで約40社の起業や経営に携わって得たとか。

 で、その彼が、どう変わったのか。

 ―シアトルの最低賃金を時給15ドルに引き上げる運動を主導しました。経営者のあなたがなぜ?「もう十分稼いだし、商売も極めました。これからは政治や市民社会にエネルギーを注ごうと決めました。米国社会が抱える最大の問題が格差です」。(ウーム・・・)

 彼の話を、さらに、聞きましょう。

・「みんなの賃金が上がれば、我々のお客の懐も潤う。誰もが購買力を備えた経済の方が、ごく少数が全てを握る経済よりも成長するはずなのです」

・「米国には、コロナとは別の『ウイルス』がはびこっていました。約40年かけて深まった新自由主義です。税金を減らし、賃金を低く抑え、企業への規制を緩める。富裕層が富めば、いずれ庶民にしたたり落ちる。そんなトリクルダウンの考え方が政治や経済を支配していました。政府の役割が軽んじられた結果、格差という病巣が広がり、社会のあらゆる側面がウイルス危機に無防備になっていました。政府が最も必要とされているいま、『政府は常に有害だ』と主張し続けてきた新自由主義者たちが政府を牛耳っている。その帰結が目の前の惨状です」

・「極端な格差は社会を壊し、いずれは富裕層の暮らしすら維持できなくなります。フランス革命のように人々が蜂起するだろう」

・「新自由主義が力を得た1970年代後半から、独占を防ぐ規制や規範が骨抜きにされました。以前はどの地方都市にも地場のスーパーや百貨店がありましたが、最近は大型チェーンばかり。大企業なら好待遇が期待できるはずなのに現実は労働条件が搾取的です。利益は大都市が吸い上げ、地方は廃れました。手を打たなければその傾向が強まりかねません」

 まるで日本の話のようです。

 ―で、どんな手がありますか。「累進課税ならぬ『累進規制』です。大企業ほど高い最低賃金や厳しい労働規制を課します。地方都市が恩恵を受けますし、規模の小さい企業が有利になり、寡占を食い止める効果もあります」

・「想像を超えた雇用崩壊は、需要が干上がったことで起きました。今回、資本主義経済で本当に雇用を生み出しているのは、1%の金持ちでもCEO(最高経営責任者)でもなく、99%の普通の米国人だったことが明白になりました。そこに向けた政策をねらなければなりません」

 そして、5か月後の大統領選挙に向けて、民主党に「中道政党たれ」と呼びかけます。

・「共和党よりわずかにマシなだけで、民主党新自由主義のウイルスに侵されてきました。私の言う『中道』は、共和党寄りの民主党員のことではありません。経済を支える99%の人々の利益を代弁する立場です。今より大きく『左』に寄らなければ中道ではない。候補者選びから撤退したサンダース上院議員極左扱いでしたが、『中道』と言えます。高い最低賃金も、国民皆保険も、富裕税も資本主義の枠内で当たり前の賢明な政策であり、大多数の有権者が望んでいるのです」

 

 長い引用になってしまいました。わたしはこういう人の話は、ほとんどが「ポジション・トーク」で話半分だと割り切るようにしておりますが、それでも、午後からのみかん取りに力が入ったことでした。

 今、「金持ち(富裕層)」というのは、どのくらいいるのでしょうか?

・「貧富の差の拡大が世界中で問題となる中、衝撃的な報告が発表された。なんと、世界の最富裕層80人の総資産額が、下層の35億人分(世界の人口の半分)に相当しているというのだ。厳密にいうと、世界の人口の1%しかいない超富裕層が世界の富の48%、残り52%のうち46%を上位20%の富裕層が握っており、その他の層が握る割合は、世界全体の総資産のわずか5・5%にとどまっている。(雑学総研「大人の最強雑学1500」KADOKAWA、2019)

・「キャップジェミニというコンサルティング会社が、2018年版の「ワールド・ウェルス・レポート」を発表した。この調査は、世界に富裕層がどれだけいて、どれだけの資産を持っているのかをしらべたものだ。この調査では、富裕層をHNWI(ハイ・ネット・ワース・インディビデュアル)という概念でとらえている。100万ドル(1億1000万円)以上の投資可能な資産を持つ者のことだ。その数は、2017年に世界全体で1810万人だった。前年と比べて9・5%増えた。そして彼らが保有する投資資産は、70兆ドル(7700兆円)だ。日本のGDPの14倍もの投資可能資産が、世界の富裕層によって保有されているのだ。HNWIの数は、米国人が528・5万人と最も多いが、それに次ぐのが日本人で316・2万人もいるのだ。しかも、その数は前年と比べて9・4%も増えている。日本人HNWIが保有する投資資産は総額で847兆円、1人当たり平均で2億6800万円となっている。これだけ莫大な投資資産を持つ日本人が、この何年かで急増し、いまや300万人以上に達しているというのが、日本の本当の姿なのだ。日本のGDPが世界に占める割合は6%だ。ところが、日本のHNWIの人数が世界に占める割合は17%に及んでいる。つまり、日本は世界に冠たる億万長者大国なのだ。サラリーマンの生涯賃金が2億円と言われる世の中で、これだけの資産を働きながらつくれるはずがない。一体何が起きているのだろうか」(森永卓郎「なぜ日本だけが成長できないのか」角川新書、2018)

・「アベノミクスでこの7年間、大企業の利益と一部富裕層の資産は増えつづけ、富裕層の資産は300兆円に迫っています。内訳は、2017年で超富裕層84兆円、富裕層215兆円です。ここでいう超富裕層とは5億円以上の金融資産を持つ世帯、富裕層は1億円以上5億円未満です。これに該当するのは、全国5372万世帯のうちたった2・3%だけですが、この層はわずか5年で25%(!)も規模を増やしているのです」(黒川敦彦「ソフトバンク崩壊の恐怖と農中・ゆうちょに迫る金融危機講談社+α新書、2020)

 

 このくらいでいいでしょう。あなたは、この中に入っておりましたでしょうか?!

 今回は以上でやめるつもりだったのです。ところが、トイレにたったときにテレビで安倍前首相と菅首相が出ていたので、ちょっとだけ付け加えることにしました。

 この両氏のこの8年間、あれほど喧伝していた「トリクルダウンが起きるから、(両氏のお仲間に)資源と予算の選択と集中を行うという政策」の実現はついにありませんでした。であるとしたら、(心を入れ替えて、覚悟を決めて)少なくとも、前述のニック・ハノーアーさんの線での「改革」に早急に着手すべきなのではないでしょうか。わたしは、そう思います。

   菅首相は「自助・共助・公助」などとのたもうておりますが、お金持ち(や大企業)は、自分のことは自分でちゃんとやれることがハッキリしました!この際、「政治家の覚悟」をもって政策のベクトルを、99%の国民の方へと真逆にすべきでしょう。わたしは、そう思います!

  思うに、アメリカのお金持ちたちはお金の使い方を知り始めたようですが、どうも日本のお金持ちたちはガツガツしていて、国にせびるばかりで、お金の使い方をしらないようです。

    また、G7やG20などでも、共同して各国が、大企業の法人税を上げ、富裕層の所得税等を大幅に上げるようにするべきでしょう。

 

 大富豪、大企業家、と聞いて、わたしはふとかのロバート・オウエンを思い出しました。空想的社会主義者とエンゲルスから揶揄されたひとです。空想的、いいじゃないですか、素敵な言葉です。一握りの富豪が変わっただけでは世界は変わらない、というかもしれません。でも、新型コロナウイルスパンデミックや激しさを増す地球温暖化などの進行する事態を思えば、新しい時代の兆候は、確実に表れ始めていると言うべきなのではないでしょうか。シニシズム冷笑主義)に陥らないことが大切です。

                         (2020・12・24)