虹の里から

地域の人たちと、「まちづくり」について意見を述べ合う、交流ブログです!

50円虫。

1、

 無茶々園のみかんつくりを、大いに悩ます昆虫に、「カミキリムシ」と「カメムシ」がおります。カメムシは、みかんの熟する頃、果汁を吸いにやって来ます。今日は、ちょうど今、我が世の春(夏?)とチョウリョウバッコしているカミキリムシの方の話をしましょう。

 標題の「50円虫」とは、このカミキリムシのことです。(わたしたちは、単にカミキリと言ってムシはつけません。正式名称はゴマダラカミキリムシです)。その昔、あまりにみかんの樹勢を弱らせ、挙句には木を枯らして農家を苦しめるので、農協と果樹同志会が知恵を絞って、対策として、「一匹50円で買います!みなさん、捕獲して持ってきてください!」とやったのです(知恵者がいたもんです!)。町中の農家が喜びました。子供だったわたしたちも喜びました。俵津中のみかん畑や野山を駆け巡って、取りました。取りました。ニコニコ・ホクホク・ウォッホウォッホと農協へ持っていきました(親たちも自分が取ったのを、子供たちにやっておりました)。それが祇園祭り(現在の俵津夏祭り)の小遣いになったのでした。そしていつしかみんな、カミキリのことを50円虫と言うようになったのです。

 農協が、これをやめて、もうずいぶんになります。理由はわたしは聞いていません。Aコープも「金融部」も止めるくらいですから、資金がなくなったのでしょうか。スプリンクラー防除をやりはじめたので、もういらないと判断したのでしょうか。

 ところが、無茶々園は、これを復活したのです。といっても、無茶々園会員農家だけが対象ですが。(残念ですが、子供がアルバイトできるのは、無茶々園農家の子供だけです)。

 

2、

 わたしは、(僭越なことを言いますが)、農協ももう一度、これを復活させたらいいのにな、と思います。

理由は、

➊ クーラー防除をしていても、やはりまだまだカミキリはいること。

➋ やはり、農協は、何といっても地域の支え。大きな力を持っています。その農協はやはり、「余裕」や「遊び」の部分が、その施策に必要です。一見、ムダなお金のようにみえるかもしれませんが、実はこういうことが大事なんですよね。

➌ 子供たちに対する「教育効果」も、ずいぶんとあるような気がします。それを、あれこれ説明するつもりはありませんが、「危険だから」とか「そんなヒマがあったら、勉強させよ」とか言わない方がいいような気がします。東京では絶対できない教育環境があるのだから、それを活かした方がいいと思います。

➍これは、農家ばかりでなく、地域住民に「一体感」を与えるいい施策だと思うんです。

➎非農家にも、「農への理解」をもたらす一助にもなると思います。

 

3、

 無茶々園に戻ります。無茶々園のカミキリ対策は、「バイオリサ」という資材をみかんの株元にハチマキ状に巻くことです。これにはボーベリア菌が付着させてあって、感染死させることが狙いです。だから、すぐに死ぬというわけではありませんが、みかんの木にやってきて、これに触れたカミキリは、交尾で触れた相手にも感染させることができます。

 卵を産むのはもちろんメスですが、山で見つけたときはメスならば捕殺し、オスならばバイオリサをこすりつけ、山に放して、感染を拡大させる手もあります。

 地道な対応ですが、一匹のメスは一シーズンで200個の卵を産むと言われておりますので、バイオリサの使用や捕殺は、個体数を少しでも減らしていくことにつながります。

 それ以外では、もうひたすら園地を見回りして、成虫を捕まえ、木にひりつけた卵を除くことしかありません。木の内部に侵入した幼虫を、早期にほじくり出すことしかありません。

 なお、言っておかなければなりませんが、俵津の5軒の無茶々園農家は、一般農家のクーラー防除のおかげで、地域全体のカミキリ個体数が減りますので、ずいぶんと助かっております。深い感謝を捧げたいと思います。無茶々園の本家の狩江では、こういうわけにはいきません。大半が無茶々園農家となった狩江では、クーラー防除をしないので、大変だろうと思います。

 

4、

 ここで、カミキリのことを知らない都会の人たちに、少しだけカミキリのことを話しておきましょうか(「グーグル検索」してまとめました)。

 かみきりむし。漢字では「髪切虫」あるいは「噛切虫」と書きます。口先が鋭く、髪の毛をハサミで切ってしまうことからこの名があります。カミキリムシ科の甲虫の総称。世界各地に三万種が分布。日本では750種がいる。その中で、みかんの大敵となっているのが、ゴマダラカミキリ胡麻斑髪切)。

 いろいろな別名があります。まず、「天牛」(てんぎゅう)。中国語に由来し、長い触覚をウシの角になぞらえたものです。「根虫」(ねむし)。みかんの株元の根から侵入(あるいは卵をそこにひりつける)するのでこの名があります。近頃は、上部の枝から入るのがいるので「枝虫」と言う人もおります。幼虫は「鉄砲虫」とも呼ばれます。多名があるということは、それだけ、人間との関りが深いという事でしょうね。

 捕まえると、胸部の発音板をすり合わせて、キイキイと鳴(泣)きます。

 成虫の体長は2.5cm-3.5cmほど。6月~8月に出現。昼夜の区別なく活動し、食樹の葉や若枝のみずみずしい樹皮をかじります。産卵後、孵化から羽化までには1年~2年を要する。幼虫は幹内部に直径1cm-2cmほどの坑道をあけ、樹皮に達し穿孔し、木屑や樹液を出す。そして、羽化した成虫は、木の幹に円形の穴を穿孔し野外に脱出飛翔します。

 ひどいのになると、みかんの木が、枯死したり、バッタリ倒れたりします(わが家でも木に登って収穫中、木もろともドーっとこけたのがおります!)。とてもとてもやっかいな相手です。

 

5、

 わたしたちは、野菜の種を蒔いて、芽が出て伸びてきた時、それを間引くことに対してさえ、心を痛める農家がいることを知っています。「自分に都合の悪い育ちがよくないものを、あらかじめ間引くということ」に対する罪の意識。「間引かれる側も、生を全うしたいだろう」という苦痛を伴う思い(内山節)。お釈迦さまも、宮沢賢治も悩みました。わたしも、この年になってもカミキリを捕殺するときは、ちょっぴりこころが痛みます。

 あれやこれやの思いを抱えて、農の暮らしはあります。

 ともあれ、無茶々園は、全国一、「化学農薬」を撒かないグループです。東京の日本一大きい生協の「全国みかん会議」に集まった生産者団体は、それぞれ「栽培歴」を公開しますが、それを見るとそのことが分かります。このことは、わたしたちが、もっと誇っていいことではないでしょうか。

 蒸し暑い梅雨の季節、わたしたちの挑戦がつづきます。

                          (2020・7・4)