虹の里から

地域の人たちと、「まちづくり」について意見を述べ合う、交流ブログです!

新田ダムで、発電する!?

 白菜が高く、一玉千円もするそうです。コロナウィルスによる自粛要請で巣ごもり状態となり、家庭での需要がふえているためだそうです。宇都宮末夫さんの4月30日のブログにあります。彼は八百屋を経営していて、毎朝宇和島市場へ仕入れに行っているのです。「ついひと月ほど前は一玉五十円ほどだったことを思えば、金銀プラチナ黄金ダイヤに大化けしたかのような印象である」とその驚きを語っています。「コロナ」はいろいろなところにいろいろな現象を生じさせますね。

 彼のブログ(=メールマガジン、ホームページ)は、ユーモアたっぷりの文章と季節ごとの俵津のみかんや風景の写真が添付されていて、とても面白いです。ぜひ訪れて見てください。http://wwwe.pikara.ne.jp/mikan  「田舎暮らしを楽しもう」です。

1、

 中島大著『小水力発電が地域を救うーー日本を明るくする広大なフロンティア』(東洋経済新報社、2018年)という本を読みました。中島大(なかじま まさる)氏は全国小水力利用推進協議会事務局長、一般社団法人小水力開発支援協会代表理事。俵津の「まち起こし」を考える上で、とても参考になるいい本だと思いました。

 ポイントをかいつまんで。

・戦後のエネルギー革命(薪炭から石油へ)と木材の輸入自由化が、山村社会を荒廃させ過疎化を促進した。

・世界的な経済の「グローバル化」と効率優先の社会は、異常事態では脆弱性を持つ。山村社会の持つ文化と知恵の強靭さが、ポストモダンと低成長時代の日本を救う。

・小水力発電を開発し、電力の自給をすることが、山村社会の自立・振興の大きなカギとなり、持続性をもたらす。

再生可能エネルギーの重要性が理解されるようになり、その電力を固定価格で買い取るFIT制度ができたことで、小水力発電が注目されるようになり、山村社会復活の希望が生じるようになった。(現在全国で毎年、約80の小水力発電所が建設されている)

・日本の小水力発電のポテンシャルについては、出力1000kw以下程度の規模の開発可能量は全国で数千カ所、合計100万kw程度。年間の発電量で言えば50億kw時程度で、日本全体の電力消費量の1%弱だが、これだけの電力があれば、山間地の需要は満たすことができる。つまり、小水力発電の可能性のある場所を開発すれば、山間地は電力の面で自立できるわけで、地域にとっては十分に大きな電力と言える。

・小水力発電には、太陽光や風力よりも設備の耐用年数が長いことと、年間発電量の多いことの二つの利点がある。

・建設費は、出力200kwの場合で大体3億円。1000kwで十数億円が目安(これを上回ると収益が上がらないそうです)。

2、

 いよいよここで、「新田砂防ダム」の登場です!

 あの水を利用して発電し、俵津全戸の電気を賄えないか。それが無理だったら公民館や小中学校など公共機関の分だけでもいい。もちろん「売電」だけしてその収益を俵津のために使うということでもいい。そう考えることで何かワクワクするようなことが起こりそうな気がしてくるではありませんか。

 俵津は山間地ではありませんが、「中山間地」と呼ばれている地帯ではあります。明浜町と白浦からこちらで一番大きな川(宮崎川)をもっております。この地域で小水力発電が可能なところはここだけでしょう。わたしは、「頭の体操」でだけでも考えてみる価値があると思っているのです。

 水力発電は、設備によって「ダム式」「水路式」「ダム水路式」の三つがあるそうです(詳しくは同書で)。俵津の場合は当然、砂防ダム(堰)から取水する「水路式」になりますが、どこまで導水路パイプを引き(つまり最も水圧の高くなる位置を選び)、どこに発電所をつくるか、みんなで知恵を絞らなければなりません。と言っても素人にわかる世界ではありませんので、専門家に俵津に来てもらって見てもらう必要があります。どの程度の「発電量」が得られるのかも知らねばなりません。

 さて、誰がやるか、です(事業主体)。この本には次の例が挙げられております。

・地区住民全員の出資による、発電事業を目的とした協同組合を設立

・「土地改良区」

・地区の「土建会社」

・市町村営

・「地域おこし協力隊」(小水力発電事業を起こすプロモーター役のリーダーを、総務省の援助を得ながらその目的で雇う)

※外部会社にまかせて「補償金」を貰う方式を、この著者はいけないと言っております。それは地域の自立を妨げるからです。

 「先進地視察」も必要かもしれません。本の中で実例があげられている所を紹介しておきます。

岐阜県郡上市白鳥町石徹白地区

富山県滑川市早月川地区

熊本県阿蘇

・同三都町清和地区

徳島県佐那河地村府能地区

・栃木県那須塩原市

・長野県栄村

3、

 わたしは、なんとか、「原発」に依存する社会から日本が離陸できないか、と考えております。この本の巻末に東洋経済新報社の既刊案内で元国土交通省河川局長・竹村公太郎著『水力発電が日本を救うーー今あるダムで年間2兆円超の電力を増やせる』という本が紹介されています。その惹句には、「発電施設のないダムにも発電機を付けるなど既存ダムを徹底活用せよ!--持続可能な日本のための秘策」「新規のダム建設は不要!」「日本は、世界でもまれな「地形」と「気象」でエネルギー大国になれる!」などという言葉が躍っていますが、(宣伝文句と分かっていても)やはり惹かれますね。

 あの未曾有の大災害を起こした野村ダムにも発電機を付ける。野村や城川には小水力発電の可能な場所がいっぱいあるような気がします。西予市が本気で自然エネルギー再生可能エネルギー)を活用するまちになったらいいなと思います。そうしたら、いろいろな知恵や人材が集まるまちになります。日本の先進地になります。(年寄りの世迷い事かもしれませんが)。

 目に見えて、手触り感があって、安全・安心が確実に実感できる。小水力発電はとても魅力的です。

 昨年秋から稼働をはじめた大和ハウスの7基の風力発電風車が、新田奥の山上で回っています。突然現れたこの特異な光景の意味するものは一体何でしょう!?深く考えたいものです。

4、

 「まち起こし」とは、何でしょう?そのまちで眠っている「資源」を探すことだ、とわたしなら答えるでしょう。かつての俵津の人たちは、「野福峠」と「俵津文楽」にそれを見出しました。わたしは今、その二つに新たに「新田ダム」と、そしてもう一つ「長崎東海」を付け加えたいと思います。

 

                             (2020・5・5)